旅館 井筒安   

先日の茶香服の会場となった、旅館 井筒安さんは
170余年の歴史を誇る老舗の料理旅館。
今回、創業以来初となる大改装をされたと伺い、茶香服のあと少しお時間を頂戴し
館の中を案内頂けることになりました。

a0118723_6341772.jpg


きれいに水をうたれた玄関の向って左手、つまり通りに面した側が
全面格子の入ったガラスで、日が燦々と入る明るい空間。
a0118723_636556.jpg

その通りは、かつて伏見街道と呼ばれた場所。
尊皇攘夷が吹き荒れた時代には、当然切りあいなど日常茶飯事で
刀やらなんやらと飛んでくるのを、皆で畳みを立てかけて防いでいたとのこと。
さすが、玄関からすでに語れる物語がある…
a0118723_637011.jpg

入ってすぐ、階段脇には新しい木目の色が照明に照り映えて美しい
広々と開放感のあるオープンキッチン。お一人様や少人数のお客様に対応する
お食事のための空間で、ご当主が自らそこに立たれて料理をされているとのこと。
a0118723_6343131.jpg

ここを作る際、タダでさえ忙しい料理旅館で長である人間がそんなことをしている場合ではない
なんて無謀ななどなどといわれたそうですが
ご当主曰く、歴代の当主が継いできたご自身の名前は店の名前の一部
看板にも等しい、そんな自分が奥に篭ってお客様にご挨拶もできないのではいけない
ご来館のお客様も、ご出発のお客様も、お料理を準備しながら
ちゃんとその時にご挨拶できるように、そんな想いから、その空間を作られたとか。
ご当主の意志が凛と伝わる、静謐な空間です。
a0118723_6344348.jpg

その奥は、美しい中庭を望む休憩スペース。
私たちだと「和モダン」とか単純に表現しちゃうのですが、それは正しくなくて
今回の改装はあくまでこれから何百年と続く旅館の歴史の通過点であり、
何十年何百年経っても同じような古今を問わない、そんな佇まいであることをめざしておられるので、
モダンとかそういう表現はあえてされないそうです。
本当に潔いまでに装飾も簡素で色もほぼ単色といえる、そんなシンプルな作り。
ちなみにモチーフは「串をさしたお豆腐」だそうです。
繭とかそんなキレイなイメージだったのですが、このヒネリ、京都です(^-^)
a0118723_635534.jpg

その奥には新しい設えのお部屋が。元々は二間だったお部屋をくっつけてお食事どころと寝室を一室に。
とても抑え目な照明と設えで、とてもシンプル、日常を排したシンプルさがとても落ち着きます。
一階二階を共通して、お部屋にはお風呂はついていません。
それは、お湯を張ると1トンを越えるものを何箇所も設けると下の階が梁や筋交いだらけ。
ということで、その解決策として、貸切の広々としたお風呂を三ヶ所。
a0118723_6351570.jpg

そのうちの一室は、かつて隣り合う名園渉成園に襖絵を納めるために棟方志功が泊り込んでいたという由緒ある部屋
そこをあえて潰してお風呂にしたとのこと…すごい英断…
そこから二階へ。沢山の人が踏みしめてきた床材は、私の大好きな感触と色。
できればはだしで歩きたい…がさすがにちょっとガマン(笑)
お二階には懐かしい建具や昔のガラスがそのまま残された、ほっとするような普通のお部屋。
廊下には一部あり合わせの木材を繋ぎ合わせたような、
一ヵ所で4種類の異なった木材が床板に使われている部分があります。
それがまた、旅館の歴史を物語って素晴らしい。
単に歩いて回っているだけだと、そんなことにも気付かないですが、
ご当主が忙しい時間を割いて、隅々までご案内くださったおかげで、すっかりこの建物のファンに。

a0118723_6352279.jpg

最後にご案内いただいたお部屋は、茶香服の行われた場所の横の一室で、一見シンプルで普通の一室なのですが
雑味がなくその分すごく静かな感じ。
なんでもここを好んでご利用のお客様にはこの佇まいが集中できるとのことで、
某有名銀行の方々が重要なお話に利用されるとか…
a0118723_6355682.jpg

窓越し、風でヒラと揺れるすだれの合間から、下の伏見街道がみえます。
江戸末期激動の時代にはここから何が見えたんだろう…
と、ちょっと想いを馳せました。
a0118723_63544100.jpg

茶香服が終わり、ご当主と若女将に見送っていただきつつ井筒安さんを後にすると、
目の前に夜空を照らす巨大ロウソクような京都タワー。
そうか、京都タワーのモチーフって和蝋燭だったわ…と、実感しました。
いつかあのお部屋に泊まって、ノンビリと美味しい料理をいただけるような、素敵な人になりたいものです…
ご当主、若女将には、本当に沢山のお時間を頂戴して、真のおもてなしを頂戴しました。
プロとして自らの舞台となるこの旅館を心から愛し、想いを込めて手入れをされて、
そしてこれからも育てて行かれるのだなと、しみじみと心の底から感じました。
ご当主ありがとうございました!
次は…お客か、はたまた競争相手か…(笑)
[PR]

by miyumayu27 | 2014-03-06 06:00 | 京都のこと

<< 春のたくらみ Food Mood >>