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「コンニャク屋漂流記」   

「コンニャク屋漂流記」という、とある本の不思議なタイトル。

漁師を祖先にもつ方が書かれた、先祖をたどる軌跡
エッセイのようなルポのような、不思議な本。
他人の一家の祖先の話、要するに他人の話なんです。
それをダラダラと書かれたなら、普通なら読む気なくすところが
何か惹きつけられて、最後までほぼ一気読みでした。
淡々として、でも骨太で、当たり前の日常を織り交ぜつつ、過去と現代を行き交い
自分のルーツをギュっと抱き締めつつ、未来へそっと差し出すような
過去を忘れないことで、自分の存在意義も未来につなげるような…
でもそれは作品の感想と言うより、私の願いでもある…かも。

コンニャク屋って書いてますが、コンニャクの話は一切でてきません。
「どう説明したらいいか、わかんないけど面白い」
それは読んでいただけると、理由が分かります。

最後に、本文から、何よりココロにしみた箇所、一部抜粋を
「記憶-それは不確かで移ろいやすく、手放さなければ泡のように消えてしまう、はかないもの。
だからこそ、けっして手放したくない、何よりも大切なもの。
歴史の終わりとは、家が途絶えることでも墓がなくなることでも、財産がなくなることでもない。忘れること。
思っている限り、人は生き続ける。
忘れること、忘れられることを恐れながら、それでも生きていこう。」
星野博美 著「コンニャク屋漂流記」
396-397頁より

我々が何かを記したいという衝動も、忘却からの懸命な逃避ということなのかしら…

by miyumayu27 | 2012-10-08 20:00 | 本と映画のこと

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